生活習慣病   ・・・臨床医からのひと言

 

** 心の病い と 生活習慣病 **

 

 

 成人病に替わって生活習慣病の分類が定着してきました。どう予防すればいいのかが分かりやすくなって、国民の健康促進に寄与しています。予防医療の時代です。

心の病いにも生活習慣病があるのですが、まだほとんど認知されていません。

そのことでお話しましょう。

 

先の、** 独りぼっち ** の例にある睡眠時間に関係しています。

 

さき頃、企業の相談室で、中堅の紳士が精神科産業医の私に訊ねて来ました。

「実は、子どもの頃に父親が躁うつ病になり入退院を繰り返した壮絶な周期をずっと見てきた。今は認知症で、もはや人生の終末期を迎えている。彼のようにはなるまいと自分を見つめて生きてきた。彼の事はもういいのですが、同じ年齢に差し掛かって“いつか自分も・・・”の不安を払拭できない。遺伝性があるのか、予防法があるのか、知りたい。」と。彼に応えたことを以下に記録して、みな様にもご参考にしていただきたいのです。

 

『躁うつ病のことを、最近は、気分障害といいます。なかでも特に、双極障害と呼んでいます。双極とは、“躁症状”と“うつ症状”の両極に揺れて、周期的にあるいは交替して症状がみられることを言います。お父さんの状態です。

気分障害の診断名は1980年以来使われるようになりました。日本では特にここ数年で一般化してきています。“うつの時代”といわれ始めたのはもう10年以上前でしょうか? その“うつ”にしても、実は“双極Ⅱ型障害”といって、“うつ気分”だけを問題に治療するのでは回復しない場合があることが解ってきて、治療法は進歩発展してきました。


お父さんが受診していた時代に比較すると、精神科医療は大変換を遂げています。当時は、躁状態への治療が大変困難でしたし、うつ状態と躁状態とを総合的に治療する方法が定式化されていませんでした。


しかし今、双極Ⅱ型障害ではっきりしていますが、“うつ症状”に至る直前に、その目で見れば、“軽い躁状態”と見られる周期があることが判って来ました。“うつ病”を発症した後で振り返った時に初めて、本人も周囲も、単に“元気溌剌としている”と見ていた状態が実は“双極障害の始まり”だったのだと認識するというものです。

そこで問題は、単に“元気溌剌としている”状態と、“双極障害の始まり”とを、どう区別して見分けるのか、ということです。

 

ここに、睡眠の問題が登場します。一般的注意点を申し上げましょう。

 

6時間以上の夜間睡眠が十分にとれていて、それでいて“元気溌剌としている”なら、まずは問題視せずに済ませていいでしょう。

6時間以下の睡眠なのに“元気溌剌としている”なら、ちょっと心配して下さい。6時間の睡眠では、日中には眠気があるし倦怠感があるものです。眠気も倦怠感も押し殺して仕事や勉学や趣味に没頭するとしたら、それは個人の自由でしょう。

ただし、6時間以下の睡眠なのに居眠りひとつせず、眠気も倦怠感もなく“元気溌剌としている”なら、それは、“双極障害”の初期症状です。

“眠れない”を自覚したら専門医を受診して下さい。

 

さて、次は遺伝に関するご心配について。

一般的な精神疾患で遺伝性が証明されているものはありません。ただ、精神障害の中でも気分障害については、気質が関係している側面が多い部類に入ります。気質というのは、性格と言い換えてもいいでしょう。気質とか性格とか言われてみると、親子の間では似通ってきますね。その意味で、ご親族に気分障害の方がいる場合は、遺伝するわけではないけれども罹患し易いと考えて下さい。その際の注意点を以下に例を挙げてお話しします。

 

生活習慣病のトップに挙げられている糖尿病のことをお考え下さい。

“糖尿病は、体質が遺伝し易い疾患です。しかも、食生活に注意しさえすれば避けられることがはっきりしている病気です。”これに倣って、以下のように説明できます。

 

“気分障害は、気質が遺伝し易い疾患です。しかも、睡眠時間に注意しさえすれば避けられることがはっきりしている病気です。”

 

つまり、双極Ⅱ型障害ではっきりしていますが、“うつ症状”に陥る直前に短時間睡眠なのに“元気溌剌としている”時期があります。これが発病の初期症状です。



もうお分かりでしょうか?

睡眠を無視して“元気溌剌としている”生活が危険なのです。

 


こうして、心の病いと生活習慣病には関連があるのです。

今や、国民の4人に一人が糖尿病の疑いだそうです。食生活の変化がわれわれの健康を侵害し始めています。

同様に、国民が押し並べて睡眠時間を軽視しています。統計によると、この20年間で1時間以上減少しています。アメリカ睡眠学会によると、“理想的睡眠は、7.5時間の夜間睡眠と30分~1時間の昼寝”だそうです。

食生活を見直すことが身体的な生活習慣病予防であるように、睡眠習慣を見直すことは心の病いと関わる生活習慣病予防です。』

 

かの中堅の紳士に私は次のようにお伝えし、彼も安心して仕事へ戻って行かれました。

『ご家族に糖尿病の方がいたら食生活には特に注意が必要で、食生活に注意しさえすれば発病を避けられることはご存じでしょう。全く同じことです。予防できるのです。毎日の睡眠時間を大切にして下さい。その限り発病を免れることが可能なのです。』

 

 

2010年10月30日 院長  小林 和

 

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